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■小紋の裁断は大変です。

着物の柄で小紋とは、江戸小紋のように小さな柄の繰り返しのものと浴衣や大島によくある大きな飛び柄のものとを総称して呼んでいます。

江戸小紋のような柄の場合は、裁断にもあまり時間は掛かりませんが、大きな飛び柄となると非常に時間が掛かるときがあります。時には、一日ががりになることもあります。

なぜかと言えば、基本的に着物の柄合わせは、できるだけ、付下げのように胸や前身頃に良い柄を出し、目立つお尻には柄の重ならないように配慮しながら柄を決めていくのですが、限られた反物の長さでその組み合わせを考えていくのは、容易ではありません。
一カ所に良い柄が出ると思って身頃のような長い部分を全体をよく見ないで裁断してしまうと、衿や衽の半巾の部分に全く位置関係の変な柄しかでなくなったり、柄が中途半端んな位置で切れてしまったりして、良くない感じの柄合わせになることが、多いのです。

小紋の柄合わせには、絶対の決まりはありませんが、裁断のルールがありますし、いろいろな変化が考えられ、その組み合わせは、何通りもあります。裁断する人の知識とセンスが要求されますので、この意味では、訪問着などのえば物のように柄合わせが決まった物の方が、考え方としては、簡単な場合があります。

■くけは、運針の達人がなすもの

着物の仕立てには、運針が正しく出来ることが、非常に重要な要素です。なにしろ、一つの袷着物を仕立てるのにその運針の回数は、7千回から1万回の運針が必要なのです。運針に疲れず、スムーズに一定のリズムの中で、まっすぐ、生地に合わせて、運針の出来るようになるためには何万回練習すれば良いのか、具体的には、解りませんが、相当な練習が必要です。

絹物を縫えるようになるためには、初心者は、まずは、綿の生地や堅い帯芯などを糸を付けずに最低毎日約一週間、何時間か練習して左右の手の連動を体に染みこませるような期間を持たなければなりません。そればかりでは、飽きてしまうので、次に糸を付けて何週間か綿のものをまっすぐ縫う訓練をする必要があります。

その後、ある程度同じ針目でまっすぐ縫えるようになってから、絹物の胴裏や襦袢などの羽二重ものを真っすく縫えるように練習します。絹物は、非常にデリケートなので、両手の引き加減が強くても弱くてもきれいに縫えません。同じ力加減で、ミシンのようにスムーズに優しく生地に合わせて両手の連動が出来なければ、決してきれいに縫えないのです。

運針とは和裁では、布と布をミシンのように縫い合わせる作業とくけと言って布の中に針をくぐらせて布を縫い合わせる作業を総称しています。

ただ、縫い合わせる作業だけでもまっすぐ縫い合わせるには、大変な修練が必要です。何年も和裁を続けている人でも何日か休むと手の感覚がくるっていつものように縫えなくなるようです。

特に、縦横を布目で縫うことは、まだ楽ですが、バイヤスの衿付けなどを縫うには、左手全部の指を微妙に使うため少しの狂いが仕立てにでるようです。

この左手の感覚は、非常に繊細で、くけなどをするには、右手で押し出した針先が、まっすぐ通るよう左手が連動して初めてふつうの運針のように布をくけることが出来ます。くけには、本ぐけと折りぐけがありますが、運針の達人は、中を通る針先が見えなくとも針をいちいち抜かずに実に良いリズムで、かなり長く衿などのくけを行っています。折りぐけの時は、左手の中指をセンサーのように使って針目を見ないで、表に響いたりしない、ほとんど見えない位のくけ目で長い距離を運針していきます。素人は、このくけが出来ないので、どうしても流ればりになったり、くけ目が曲がってしまいます。くけでも針は、布目に出来るだけ直角に入ることが重要です。これが、出来ているくけは、非常にぴったりとしたきれいなくけ目になります。

■袷のとじは、生地との相談

■八掛の素材は、表地に合わせないと保管の間に釣り合いが、狂います。

■袖に技術が詰まってます。

■洗い張りの仕立てについて

■安物の胴裏は仕立て屋泣かせ

■衿の作りが一番難しい

■縫い込みの納め方で仕上がりは、大違い

■洋服の感覚で着物の釣り合いを見てはいけません。

■留めは、糸一本でその精度は決まります。

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