■子供の着物1〜「一つ身」と「四つ身」
「一つ身」や「四つ身」といえば子供の着物の名称ですが、その名は裁ち方の違いを表しています。裁ち方によって出来る身巾が異なるので、着せる年齢を考えて合理的に裁断できるようになっています。
(参考)
●以前は二つ身・三つ身・五つ身もありましたが、今ではほとんど作られなくなりました。
●―つ身から三つ身を「小裁ち(こだち)」、四つ身と五つ身を「中裁ち(ちゅうだち)」とも言います。
●本裁ち四つ身は「大裁ち(おおだち)」になります。
■子供の着物2〜本裁ち四つ身・祝い着
「本裁ち」とは通常の裁ち方、つまり大人物と同じ裁ち方のことです。同じに裁っても巾や丈を縫い込んで子供用の大きさに縫い上げるので一見「四つ身」と変わりないのですが、裁ち方と構造の違いから「本裁ち四つ身」と呼んで、子供用の裁ち方(中裁ち)の「四つ身」と区別しています。
「四つ身」は、布一枚分の巾で前巾とおくみ巾の両方をまかなうため、体格にもよりますが着られる目安は7〜8歳位迄です。したがって、7歳間近に新調するのなら、「本裁ち」で作るのが普通になっています。
「本裁ちにしておくと大人になっても着ることが出来ます」と、お店で言われる方もいると思います。ある意味その通りですが、気をつけてほしい点があります。
寸法と総尺の兼ね合いです。子供の着物も日常着なら、袖丈は1尺3寸もあれば充分です。しかし、七五三の晴れ着として作るなら普通は振袖にします。7歳で2尺位です。残りが身頃と衿おくみになりますから、標準的な長さの染め着尺ですと、大人用に作り直しても身丈は背から4尺内外でいっぱいです。身長によっては不自由しそうです。
子供のときに2尺に作った袖を大人の1尺3寸の丈に直せば余り布が出ます。その布を身頃やおくみに接いで仕立てるならば背から4尺3寸の身丈も出来なくはないですが、そのような細かな点を考えてお仕立てをしたとしても、先々まで記憶に残るかは分かりません。また、よほど抑えた地色と柄でなければ、子供に似合う色彩は大人には強すぎます。
成長しても数年は、サイズ直しをしながら着て楽しむことが出来る、というくらいにしておかれたほうが良いのではと思います。
●十三詣りまで着せたい・・・
7歳の祝い着を作るにあたり、「十三詣りのときに仕立て直さないで着られるように、身丈と身巾を大きめに作ってください」と言われることがあります。気持ちは分からなくはないですが、7歳と13歳とでは、衿の巾・衿肩あき・袖付け・袖口・棲下などの寸法も異なるので、肩揚げと腰揚げをしても、7歳児にはいささか無理があります。
7歳のお祝いには7歳に相応しい寸法で作り、可愛らしく着てもらうのが一番です。十三詣りでは仕立て替えをしてください。(7歳用を仕立てる際に、成長する分を見込んで身頃を長<裁ってお<必要があります。総尺によっては身丈か袖丈を妥協します。)
■子供の着物3〜のしめを3歳祝い着へ
赤ちゃんの宮詣りの掛け着である「のしめ」の裁ち方は「―つ身」です。
掛け着として使ったあとは3歳のお祝いのときに子供に着せる慣わしがあります。
「一つ身」の着物は出来る身巾が狭いので、およそ2〜3歳までが着られる目安です。
したがって、3歳で新たに誂えるならば「四つ身」にするのが一般的です。
ここでは、「のしめ」の仕様と、掛け着であった「のしめ」をどう直せば「3歳のお祝い」で使用できるかを示します。
のしめ(宮詣り掛け着)の仕様
元々は上着と下着と襦袢の3枚重ねでした。下着とは着物と襦袢の間に
重ねて着た衣服のことで、近代では式服にだけそのなごりがあります。
現在では襦袢を簡略化して、下着の袖の内側に襦袢の袖だけを付けたも
のがほとんどです。したがって、日頃私たちが「のしめの長襦袢」と思って
いるものは本当重ねの下着です。
袖口が袖下まで開いた「広袖」にします。特にのしめの「広袖」は表地を
引き返して袖口布にするもので「大名袖(だいみょうそで)」と言います。
参考:一つ身の着物には背縫いがありません。背縫い無しの着物を着ると魔物が憑く
という云われから、背紋にあたる位置に色糸で模様を剌したり、飾り糸を背中心に
通しておくこともあります。背守(せまもり・せもり)と言います。
プレタが主流となった昨今では背守の風習も見られなくなりました。また、誂えた
品でも紋を入れたときには背守は付けません。
のしめを3歳のお祝いで着せるには
1着物の袖口を4寸程度にし、袖口下を縫って袂(たもと)に丸みを作ります。
下着の袂も着物に準じた丸みを作り長襦絆とし、半衿を掛けます。
2着物・長襦袢ともに掛けて結ぶ役目であった紐の位置を下にずらし、
胸紐にします。
3必要に応じて、肩揚げと腰揚げをします。
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