和裁の知識
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繰越(くりこし)と内揚げについて
繰越(くりこし)とは、

女性は、着付けの時に首の後ろにゆとりを持たせて衿を抜いて着用しますね。
衿を後ろに抜き安くするために肩山より少し後ろに下がった所に、衿肩あきを回す(ずらす)こと、または、肩山から衿肩明きまでの距離(寸法)のことを繰越(くりこし)といいます。

その寸法は、以前には5分が標準とされていましたが、最近は、7分くらいが標準となっています。

着物の格や着方、好みで5分〜1寸の間で加減します。また紬などの織りの着物は少なめ、染めの着物は多めなど着物によって繰越を変える方もあります。

余談ですが、繰り越しに関しては、着付け関係の先生によってもいろいろ意見の相違がありますが、繰り越しが5分が標準であった時代には、襦袢に付けた衣紋抜きを無理に引いて繰り越しを多く見せて着用していたようです。無理に引いて着る場合は、どうしても衿がうまく抜けずに前にのめってしまいます。繰り越しを大きくする方が、衿が抜けやすくなりますので、着にくい時は、調整が必要です。ただし、あまり繰り越しを大きくして作るのも着た時、肩山線のやわらかさが無くなるという意見もございますので、ご自分の衿の抜き方にに合わせて適度な繰り越しを選ばれることをおすすめいたします。

(ちょっと一言)

衿の付け込みについて・・・
○付け込みとは、衿を付ける時の縫い代のことですが、衿付けの中心から衿肩あきまでの距離のことで5分が標準です
○男物や子供物のように繰り越しを付けないで仕立てる物は3分で付けます。
○付け込みが少ないと後ろ衿が立ち上がって見えるため、女物の大島紬のように衿をシャキッと見せたい場合は、付け込みを3分で今でも作る場合があります。
○付け込みの量が少ないほど、平らに同じ縫い代で付ける距離が長くなるため衿が立ち上がり、量が多くなるほどカーブに縫う距離が多くなるため布目がバイヤスになり、衿が内側に入り(衿がねる)やすくなります。

○付け込みを8分指定など、最近洋服のように衿を全体に丸く見せるようなご注文もございますが、まっすぐの衿肩あきに付け込みを多くしすぎると仕立て上不具合が生じることがございます。
コートや洋服のように衿を丸く付けている物は、衿肩あきがはじめから丸く切ってあり、同じ縫い代で縫えるように切ってあります。そのため、繰り越しと付け込みを足した寸法を繰り越しといっている場合があります。

※左の図でわかるように和裁の場合は、一般的に衿肩あきを直線に切ります。肩山からこの直線(衿肩あき)までの長さを繰り越し寸法といいます。
繰越揚げと切り繰越
一般的に小紋の場合は、身頃を前後同じ長さに揃えた肩山に衿肩あきの切り込みを入れます。

これは、着物を洗い張りをしてまた作り直す時に前後を入れ替えても同じ身丈に作り直すことができるようにとの考えからです。

ただし、絵羽物といって訪問着や付下げのように前後を変えることのないようなものは、柄を重視するため切り繰り越しの形に衿肩あきを切って作ることもよくあります。

繰越揚げと内揚げ
反物の長さに余裕がある場合縫い代をギリギリに仕立てるのではなく、将来身丈を長くしたり、裾がすり切れた時などに裾を切っても本来の身丈を確保できるように身頃に適量の布を縫い込んでおく必要があります。それが、「内揚げ」の意味であり、重要なところです。

昔の着物は、仕立て上の簡便さや用尺の少ない反物が多かったことから、繰越揚げしかしていない着物がよくあります。

上の図は、最も一般的な小紋類の場合の内揚げの取り方です。絵羽物の場合は、「訪問着の柄あわせ」で図解しています。
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