1.適度な縫い込みを取っていない仕立て
反物の用尺が十分ある場合は、必ず身頃の縫い込み(内揚げ)に対応した衽や衿の縫い込みが必要です。もし、その対応が悪いと仕立て直しの時身丈を長くできなくなります。
*反物の長さは、一反が約3丈2尺(12.5m)ほどありますが、品物によってその長さはまちまちです。そのため、着る方の身長や袖丈によっては、十分に縫い込みを取れない場合があります。反物を購入するときは、長さを確認することが必要です。
2.見えないところですが、寸法の印つけの時に色チャコや通しベラ(強く線を付けてたもの)を使った仕立
このようなものは、洗い張りをしても消えません。特に色の薄いものや大島のきものなどは、後で仕立て直しが出来なくなります。
3.むやみに切り込みを入れた仕立
簡単にキレイに見えるように仕立てるために、袖口下に切り込みを入れたり、きものの衿肩明きを洋裁のように大きく丸く切って仕立てているものがあります。このような仕立ては、洗い張りの時に布が裂けたり、布目にひづみができたりしやすく、巾が出来なかったり、衿回りがきれいに仕立てられなくなる原因になることが多いです。
4.衿肩回りにつれのある仕立
きものを着用したときに美しく見えるポイントは衿回りです。
衿回りは、プロの加工者が一番神経を使うところで、技術的に難しいポイントです。やはり、加工者の力量の差が出ます。
5.生地の布目を無視した仕立
絽の布目などは、見た目ではっきり解りますが、自然な布で布目が通していない仕立ては、丸洗いなどで裏表のバランスが崩れやすく、たるみがでやすい仕立てです。
ただし、生地に柄を貼り付けたり、刺繍やしぼりによって反物にゆがみが出ているものは、布目を通して仕立てられない物もあります。
*基本的に、仕立て直しが後で可能なように仕立てをするのが、和裁の考え方です。私どももよく駄目な品物を見て自らを戒めておりますが、その時だけ、表面的にきれいに見える仕立でなく、30年先を考えて中身を丁寧に扱うのが、本当の和服の仕立だと思います。ですから、新しい物をしたてるのには、本当に責任を感じるものです。