和裁の知識 | |||||||||
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<和裁の知識>
伝統的な着物は、江戸の時代から1反の布を同じ比率で無駄なく直線裁ちしてありますから、古着でも古布でもすべて規格品でした。この点が、分解してしまえばほとんど商品価値のなくなる洋服とはまったく異質で、根本的にリサイクル構造になっています。
ちなみに江戸庶民の良妻の条件として先ず挙げられるのが裁縫が上手なことで、娯楽の少ない時代ですから、このころの女性は、一日の生活の中で食事の支度以外の実に多くの時間を裁縫に費やしていたようです。
第一に最も大きな違いは洋裁は縫い代を切り落としてしまうのに対して和裁は反物を大事に使うため(一反の限られた長さの反物から作る。*反物は同じ物のようでも微妙に織りや染めが違ってしまうので、同じ物はないと考えて裁断します。)無駄に縫い代は切り落としません。 和裁でもコート類は衿は曲線に裁ちますが、着物類は縦横の直線断ちにします。従って、ほどいてつなぎ合わせると元の反物の状態に戻せます。
次に縫製の仕方です。洋裁は機械ミシン縫製、和裁は手縫いです。ミシンは通常下糸と上糸で縫い合わせる都合上、針がどうしても太くなりますので、生地に穴を空けてしまいます(生地の糸目を切ってしまう)。
それに対して和裁は、先が細く同じ太さの針で一本糸で縫うため生地をほとんど傷つけないで済みます。特に、絹物の場合は、絹自体が湿気により、伸び縮みしますので水に通すとほとんど縫った縫い目が残りません。
この違いは、再生、使い回し、リサイクルの視点から出来ている和服と洋服の違いを明らかにしています。
洋服は、身につけるという観点からは、曲線や立体に合わせて体にピッタリとフィットして現代人の生活には非常に適していて無駄がない気がします。それに対して、和服は身にまとう物ですから、着る人の着方で許容範囲があり、個人の着方によっては同じ物でもルーズの感じにもなるし改まった感じにもなります。
それをどう感じるかは、着る人の感性によりますが、帯を締めて着ることから、姿勢が矯正されて、着物を着ると何かシャキッとした感じになります。
裁断については、洋裁は特別の物でない限り同じ反物が十分にありますが、和裁は一反の限られた長さのしかも二つとして同じの物のない反物(反物は同じようでも微妙に織りや染めが違いますので新品のものでも同じ物はありません)を使用して作りますので、洋裁より裁断に大変なリスクがあります。
一人前の和裁師であれば、反物の裁断から仕上げまで全部一人の手で仕立てます。
もし、お客様からのご注文があれば、細かなところからすべて一点一点対応が可能です。
一から準備して着る方に合わせて仕立てしますので、高い知識と仕立ての経験・熟練も必要になりますが、お客様のご希望に添ってで作り上げたきものを本当に喜んでいただけることが、和裁人にとって最大の幸せです。
■きものは世界の中でとても評価の高い日本固有の民族衣装
韓国のチマチョゴリ、ベトナムのアオザイ、インドのサリーなどの他の国の民族衣装と比べると日本独自の文化から生まれた着物は、その素材や柄付け、縫製の点で世界の中でも特に美しい民族衣装です。 これは決して手前みそでは無いと思います。
■きものを着ることについて
江戸時代のように日本人が、着物だけの生活の時には、今ほど着物はキチンと着ていなかったと思います。反物の少なかった時代には、今ほど生地を夏用や冬用に変えられたのでしょうか。若者はどんな格好をしていたのでしょうか。
現在は、あまりに着物が高級品のイメージがついてしまって、本来日常品であった着物がフォーマルな方向に偏ってしまいました。着付けの学校もあまりにキチッとした着方を追求し過ぎて本来の楽な着方を見失っているように見えます。今のように着物を着る人が少なくなってしまった時代では、楽な着方が逆にだらしないと思われてしまい、世間の奇異の目に晒されて尻込みをする方も多いことと思います。
ですが、最近現代に蘇った古着商のおかげで、若い人たちにも自由に着ている姿を見かけて嬉しい気がします。着物もいろいろな個性で着てもらえれば、誰もがきっと恥ずかしがらずに、着物の着ごごちの良さを感じて着てもらえるのではないでしょうか。
■きものを作っている人達
江戸時代から着物は生活の中で日常着としての着物は、ほとんどの女性が針仕事として仕立てていましたが、現在は、運針すら出来ない女性がほとんどではないかと思います。洋服の普及や外国文化への傾倒が本来日本人固有の文化をおろそかにしている気がしてなりません。
■国内縫製と海外縫製
着物の仕立ても他の製造業と同様に現在かなり多くの数量が海外で生産されています。海外縫製は平成元年くらいからすでに始まっていますのでもうすでに20年近くの歴史があります。元々広島の和服縫製組合のメンバーが起こしたことと聞いてしますが、始めた方は日本の和裁学校経営者です。
■日本文化の教育について
戦後の日本教育の中で愛国心を育てる方向が欠落してしまったように思います。愛国心が他国からまた戦争を始める国だと思われるからでしょうか。そういうことではなくて、美しい四季のある東洋の島国日本の本当の良さを日本国民の大部分の人は知っているのでしょうか。そういっている私もまだ解っていないと思いますが。
今こそ自分たちで本当の日本の良さというものを日本人として見つめ直してほしいものです。戦後の日本の復興を支えてきた米国は国土や人口、軍事力は日本より強大でも、歴史はまだ浅い国なのです。日本の長い歴史や風土に培われた伝統には、世界に類のないすばらしいものが沢山あります。それも島国であり、ほぼ単一民族の国家であるからこそ出来てきたものです。
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